わが師・わが友ー加藤道理先生ー
加藤道理
加藤道理先生は、私が二松學舍に入学して、学部の一年生で初めて受けた専門科目の先生でした。当時、私は東京大学を落ちてしまい、他を受験していないこともあり、行き場のないまま、誘われるように二松學舍を受験しました。本来は、リベラルアーツ、哲学、言語学、歴史学が希望で、どれを選んでよいかわからないのもあり、東京大学の駒場の教養学部で、最初の二年間でゆっくり決めたかったのです。それが落ちてしまい、どういうわけが二松學舍の国文学科に入ってしましました。そのため、失意のどん底にありました。毎日、後悔と情けなさで、胃腸もおかしくなっていました。リベアルアーツをやりたいのに、意に反して、二松學舍という大学は一年生から専門科目が必修で、国文科であっても、中国文学科の必修科目が多いことでも知られており、講義科目で「東洋哲学史」「中国文学史」「漢詩」「日本漢詩文」、演習で『論語』『孟子』が必修科目でした。
加藤道理先生は、最初に「私は君たちの先輩です」という言葉から始まりました。加藤道理先生は、二松學舍専門学校を卒業されたあと、東京大学に進学され、高校教員として現場で国語を担当し、いくつかの高校の校長を歴任されたあと、定年後は、桜美林大学を本務とされ、非常勤で、当時柏キャンパスのあった二松學舍においでになって、『論語』と「東洋哲学史」を担当されていました。非常にわかりやすいご講義でした。師匠が加藤常賢であったため、漢字の字源の話しをよくしておられました。その内容は『字源物語』にまとめられています。
私の受けた『論語』の演習では、簡野道明の編による、朱熹の註で読んでいました。白文訓読を指名で当てられるもので、朱子学を学び、次に陽明学を学ぶという、昔ながらの二松學舍の漢文が勉強できました。どういうわけか、その後、加地伸行先生の知遇を得て、論語指導士の資格をいただき、漢文とのご縁が続くとは、不思議なものです。
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